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日常茶飯事とお仕事と

資料の書き方

職場の新人達が現場に散っていって半月ほどが経ちましたが、すでに「設計資料がわかりにくい」という声が挙がってきてます。この件についてOJT関係者との打ち合わせで出た会話で思ったことを、人事系のチームに伝えようかと思って書きかけた文章をメモっておきます。

書きかけて辞めた理由は「冷めてしまったから」。

先週伝え忘れたので。資料の件で印象的だったのが、新人側の言葉がOJT関係者側に伝わってないことですね。
新人さんの


・(非常に読みづらい現場の資料にくらべて、研修担当が作った)
 研修時の設計資料が読みやすかった。


に対してのOJT担当さんの


・まだ読み方が判ってないから教えていきたい。


と言う言葉のすれ違いがすごいなと。できるだけ、若い人には完全でなくともせめて悪くないものに触れさせてあげたいと痛感しました。


もちろん難解な資料の読解能力も必要ですが、それと「難解な資料しか作れない能力」は連動しなくても良いと思います。また、社外から来ている人がそういう資料で苦戦するのを痛々しく思いながら見てきてるので、良い派遣人材をつまらない理由で逃したり、「読みづらい」だけで作業効率が大幅に落ちたり不具合の原因になるようなことも回避したいですね。

資料の体裁や構成の悪い点についてはこれまで散々、さりげなく言ってみたり、訂正版を見せてみたり、きつく指摘してみたりしてきてみましたが、いずれも「お前が判ってない」的な対応でながされているので、正直あまり積極的なアプローチをする気にはなりません。せめて、新人くらいには比較的良い例を見せて、上手いやりかたをそれぞれ模索してもらうようにしていきたいと思ってます。

新人が言いづらい中、「現場の資料が読みづらいです。一方で、研修で使われた設計書などはわかりやすかったので、わかりやすく書くことは可能だとおもいます。私はそれをできるようになりたいです(端折った他の部分も総合するとそういう事が日報に書かれていた)」という言葉を言ったにもかかわらず、現場の担当は「それはお前の読解力が足りないからだ」と一刀両断しています。あぁ、ひどい。

資料の品質を上げることは我々の主務ではありませんが、いわばシステム開発の「材料」とも言える素材。やはり、良い材料で料理を作った方が美味しく作れるじゃないですか……。と思うのですが、たいていの弊社のエンジニアさん達はその材料の調えかたを習っていない。

学歴偏重にするつもりはありませんが、私が唯一「理系の大学生が大学で学んだことでどこでも使える能力」は論文などの文章を構成、作成する能力です。数ヶ月にわたって1つのテーマについて調べ、まとめ、それを文章やプレゼンテーションとして整えるという作業を経験しているかどうか。これは就職して大きな違いとして出てくるように思います。高校生に毛が生えた程度の知識の人たちが、大学の教授、助教授や大学院の先輩などからひたすら文章を直され、赤入れされ、場合によっては書き直させられたりし続ける経験ってのは非常にインパクトがあります。
もちろん身につくかどうかは人それぞれですが。

また、個人的に一番大事だと思っているのは「概要」「abstract」を書けるかどうか。これから読ませる文章が一体何で、全体の中のどこの位置にあるのか。これを数行で書くだけで、読み手の負担や不安はかなり軽減されます。こういうのが現場の資料には圧倒的に足りていません。

こういうところがある程度判っていたり経験していれば、

  • いきなりフォームの部品の挙動について細かく記されている
  • フォームやページ同士の相関や遷移の情報は無い(作り手は言われた画面の機能だけ作っていればいい、というスタンス)
  • 文体や言い回しは重要ではない。要は中身なのだから!

みたいな資料を作ることはないでしょうし、そうした問題に直面したときに、大学などで経験したことがフラッシュバックすることでしょう。

別に大学の経験が必須というわけではないのです。高校生+アルファくらいの人ですら数年で研究論文を書いたりするようになるのだから、誰でも後付けで身につけられるテクニック。あとはそのテクニックの必要性や重要性に気づくかどうか、目の前のものについて少し疑いを持ったり、改善の余地を探したりする気持ちを持てるかどうか。それだけだと思います。

もう年寄りをどうこうしようとは思わないので、若手には良いものに触れてもらうように仕向けたいものです……。


才能に頼らない文章術