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日常茶飯事とお仕事と

2019年新人研修報告(転記)とコメント

自社内で掲示していた自分の報告を消したので、こちらにコメントを付けて転記。「この薄い色」がコメントです。主に文系学部出身の新卒新人を小規模のシステム開発会社の新人として迎えて研修する際の指針の例として参考になれば。

2019年新人研修報告(7月まで)

4月から新人3名に対して2018年度とほぼ同等の講義、実習課題で研修を実施してきました。新人の作業状況などが現在、実質的にクローズドになっていることから、ここでいったん7月までの研修について振り返り、報告とさせていただきます。

基本方針

  • 研修期間は4月~9月とします。
  • 教育カリキュラム(講義系)は、IPAが製作したITSS教育カリキュラムにそった自作資料と講義で、4月~6月にかけて実施します。
  • プログラミング言語研修は、VBAC#を中心とし、特にどの言語でも応用できる基本的なロジック組み立ての学習を主眼にするため、Webアプリケーションを敢えて外してWindowsアプリケーションの作成を中心とした実習を行います(5月~6月) 7月~9月は設計、実装、テストの工程を模擬的に体験する場として、最終課題を与えて単独プロジェクトの推進を体験してもらいます。実習課題は前半と後半の2件を用意します。
  • 4月からある程度安定するまで、研修担当や先輩社員による面談を定期的に行い、課題や問題点のヒアリングを行うことで、不慣れな環境への適応や新生活で起きる問題などの解決を図ります。
  • IPAITパスポート試験受験に向けた学習を推進し、6月~7月の受験、合格を目指してもらいます。
  • 5月~7月あたりで新人によるイベント企画(通称:新人プロジェクト)を実施してもらいます。

転記に際してのコメント:上記のカリキュラムや基本的な骨組みは2017年末~翌春にかけて構築したものをほぼ流用。文章や内容の一部刷新を行う程度だったので準備は比較的軽微な工数で終わらせられました。末尾に書いている「イベント企画」は、自分は実施に反対の立場を取っていたのですが開催されることになりました。反対の理由は「他にやることがあるから」です。もちろん規模や新人の性質、経歴などによってはコミュニケーション増進や気分転換といった面で実施するのも悪くないと思います。しかし、短期間で未経験の人を仕立てるには、この「自分達で計画から進めるイベント」というのは負担でしかありません。

参考にされる方は、是非「何が本題で優先度高の事案か」を考えて、余裕の時間があるようなら実施されることをお勧めします。

所感

  • 3名それぞれの個性はあるものの、理解度に関して大きなムラを生じさせることなくついてきています。
  • 新人同士のコミュニケーションややりとりも、それぞれ独立した個性を持つ3人であることを鑑みると上手く互いに調整しながらやりとりしているように見受けられます。
  • 昨年と異なりITパスポート受験に向けた学習と、6月末の受験、さらに新人イベント企画の進行が同時期にあったことから、C#の実習については大きく時間を削り、7月からの最終課題も半月ずれこんでいます。結果、「習ったプログラミング言語でいろいろ好きに試してみる」という時間が昨年に比べ少なく、最終課題の実装などに若干の堅さや理解不足による遅延が見られます。しかし、3名それぞれが互いに情報交換などを行いながら作業を進めることで、不足する知識や経験を補い合っているので、今のところ結果的に大きな問題にはなっていません。
  • 上記のような状況で、ゼロから学んでITパスポート試験に3人とも合格。また、慣れないプログラミングの実習を行いながら同時に教育担当課長の指導でイベント企画もなんとかこなした点は評価したいとおもいます。

転記に際してのコメント:しれっと苦言を織り込んでます(笑)。2018年は資格や検定試験的なものの受験は「推奨するが義務では無い」という扱いだったのですが、この年はITパスポートを「6月~7月で合格」という目標が立てられました。私はIT系の試験は学習の機会としては非常に良いと思いますが、合格したからといって何が出来るというものでもなく、早い段階で義務化することには反対だったのですが。こうなるともう単純に「研修を推進する側の評価成績として実績がほしい」でしかなくなってしまいます。このあたりも、新人の特性や経歴等から柔軟に対応されることをお勧めします。

現状

現在は下記のような状況です。

  • 一通りの講義受講完了。
  • C#の学習および実習課題完了。
  • SQL教本による独習完了。
  • 最終課題、前半分の実装作業まで完了し、現在テスト工程。一部完了間近。

この後の作業

  • 最終課題後半分として、前半で作成した機能をベースに機能拡張。詳細設計からテスト完了までを担当してもらいます。
  • 最終課題後半の準備が整うまでの間はJavaScriptの教本を利用した独習を行ってもらいます。
  • Webアプリケーションに関する学習は期間の問題で現在後回しになっています。そのため、教育期間終了~10月あたりを用いて、2年目、3年目も巻き込んだWebアプリ開発手法の学習ができないかと考えています。

みなさんにお願い

  • この新人研修では、この先登場する様々な仕事に対応するための基礎部分をカバーし、最初のレールを敷いているに過ぎません。彼らがさらに伸びて行くには、皆さんが現場で、実際の仕事の様子やノウハウを伝え、教えていただく必要があります。
  • 日々進歩しているソフトウェア技術やプロジェクト推進/管理手法、テストや品質管理の手法等々、さまざまな知識を常に更新しつつ仕事をこなしていく術を、みなさんそれぞれのやり方で若手に伝達し、次代につないでいっていただきたいと思います。
  • ぜひ、皆さん自身の普段の仕事の中に、後輩に何かを伝達するという余裕を確保していただき、広い意味での教育にご協力いただければと考えます。よろしくお願いいたします。

転記に際してのコメント:本音は「こんなこと、わざわざ社内全体に伝えるべきことではなく、普通に当たり前の事」です。先輩や経験者が初心者に教える、また、お客さんであっても誰でも、知らない事がある人がいれば、それを助ける。そんなことは当然で。それをこうやって「やってくださいね」と伝えないといけない時点で組織の状態が丸わかりで恥ずかしいですね。自分が逆の立場だったら「んなこと言われなくてもわかるわ!」ってなるところです。ただ、こういうのは結局の所「教えられた経験がある」ってのが一番早い「教え方」への道です。もちろん例外もありますけれど。ですので、学校でも何でもいいのできちんと教わる、ってことをやった人がきちんと教える。そして、次の世代にまた教える……という連鎖を何年もやっていれば、やり方の古さや洗練度合いなどの違いはあれど、「伝える」という素地は普通は出来るはずなのですが。それが無い組織だとこういう呼びかけが必要になります。ただ、これも実際にはこの教え方自体が上層部のお気に召さなかったようで握りつぶされてしまいましたが。ま、皆さんは自組織について「こういう呼びかけ必要だな」と思える場合、何かしら根源になる原因があるとおもうので、そちらから潰していくことも併せて実施してみてください。

その他

気が早いですが、現時点で検討されている来年度の教育に関する方針のいくつかを共有しておきます。

  • 新人プロジェクトについては実施しない方向 …… 研修担当課長より、新人のイベント企画については来年は無しにするという方針が出ています。実際、初期の教育課程の物理的な時間や関心、注意をあまり分散させない方が良いという点でも、実施しない方向でよろしいかと考えます。
  • 3年目以降の教育への参画 …… 2年目、3年目と若手が増えていく中、様々な質問やアドバイスといった作業を自分一人で対処するのが非常に困難になってきていることから、教育作業のアシスタント的なポジションとして若手メンバーに参画していただけないかと考えています。長期的には、現場で後輩を指導する際のノウハウ習得にも役立つと考えます。
  • ゲスト講座の講師陣拡大 …… 先輩が一部の講義を担当するゲスト講座、これを、先輩達のプレゼンテーション、教育指導能力強化の場としても活用できないかと考えています。組織としてシステム開発を進めていくには、技術力、管理力にくわえ、対人折衝能力や表現、伝達の能力を備えたマルチタレントな人材が不可欠です。教える側に立つ機会を設けることで、これらの能力を若手に説明するにあたっての裏付けや基礎の再確認を行い、先輩側の能力、知識の基盤を固められるのではないかと考えます。

転記に際してのコメント:WebアプリやJavaScriptについての研修は2018年の初年から課題となっており「来年はやろう」みたいな感じで上からも言われていたのですが、結局「人は増やさない」「教える人を育てる事もしない」という決定をしたのも上の方々でした。こういう「先送り」ですが、実際に経営や開発プロジェクトもやっているとどうしても後回しになりがちです。なので、先送りの研修や事案があるならば早い内に「数年先」までのロードマップを用意して上層部を巻き込みながら長期計画に持ち込むことをお勧めします。毎年更新、では研修や教育はする側もされる側も定着しません。

今後の課題

  • 技術系学部/学科卒業者向けのカリキュラム …… 工学部、特に情報工学ソフトウェア工学系の出身者が入社した場合について、現在のカリキュラムでは対応仕切れない可能性があるため、追加教材やカリキュラムの組み替え、追加などの処置が必要と考えます。
  • 教育担当者の拡大 …… 属人化が深くなりすぎる前に、教育業務に携われる人材を増やし、多様性、負荷分散といった対処を行う必要があると考えます。
  • メンター要員の育成 …… 新人の長期的なキャリアパス構築や、様々な悩みや相談に客観的な視点から応じ、道を指し示すことができる先輩社員の育成が必要です。