仕事で「名詞+ください」という組み合わせを多用する人が結構います。たとえば
- 着手ください
- 着席ください
みたいな感じですね。極めつけは
- ケアください
もありました。正直こう言われると「ケアしてほしいのですか?」「あなたのケアを、私にください」という要求の言葉に聞こえてしまいます……。
本来の使い方
この「ください」は、ストレートな意味だと「くださる」の命令形、それも尊敬語としての形式になったものですが、もう1つの使い方があります。他の動詞にくっついて利用される「補助動詞」です。その場合、使い方のパターンとしては
- 「お」を付けた動詞の連用形につなげて、要望を伝える
- 「お」を付けた動詞の連用形に接続助詞「て」をつけて、要望を伝える
- 「ご(御)」を伴った漢語(←ざっくり言うと名詞)
ただ、この「名詞を付ける」場合はサ変活用可能な名詞、すなわち「する」をくっつけることで動詞として使えるものに限るようです。たとえば
- ご着席ください
- ご購入ください
などですね。本来はこのように、「名詞+ください」は「御」がついて敬語扱いの丁寧な表現のはずなのですがこの「御」を省略して言う人が増えているということのようなのです。このことは、既に2009年のブログに書かれていました。
「提出ください」もそうですね。この方のおっしゃるように、言葉は変遷するものなので何が主流になるかは変わっていくものですが、本来は尊敬を込めて言っていた言葉の、尊敬を表す「御」が省略されるってのはどうなんだ?と私は思います。変遷したあとの社会で言葉を使う人ならまだしも、今の過渡期で、それも仕事として言葉を使うのであれば、自分が何を削って喋っているのかということを意識して「敢えて省略する」という丁寧さをもって語って欲しいな……などとおもうのですが……。求めすぎでしょうか……。
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