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日常茶飯事とお仕事と

原神「風花祭」2023でのセノジョーク(Cyno's Jokes)

原神、ゲーム内で定期的に開催されるモンドのお祭り、風花祭のイベント「風花の吐息(Windblume's Breath)」で、スメールの警察機構のような組織のキャラクター「セノ(Cyno)」が、ティナリやコレイと共にモンドを訪れるのですが……。このセノというキャラクター、設定上、お堅い仕事で融通が利かず、敵に回すと恐ろしいという性格にもかかわらず「カードゲームとジョーク好き」ということになっています。で、このジョークがやばい。なにがって、場を凍らせるタイプのジョークなんですね。というわけで、このジョークに対して凍り付く場と、それに対して冷静に突っ込みを入れるティナリという構図を我々は楽しまざるを得なくなるのが今回の風花祭イベントです。

このジョークについて紹介し、FANDOMのGenshin Impact Wikiにある英語版セリフとの対比を少し見てみます。それぞれジョーク発動シーンの動画を用意していますのでそちらもどうぞ。内容的にどうしても風花祭イベントのネタバレにならざるを得ない部分があるので、必要なら視聴は避けてください。

大マッハマシン

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ティナリと共にモンドの門に向かうセノ。セノは過去にもモンドを訪れたことがあり、モンドの象徴ともいえる大きな風車を見て「大マッハマシン」という言葉を発します。これですが、セノの役職である「大マハマトラ」の仕事ぶりと、効率良く仕事をする装置(風車)を組合せ「大マハ(マトラ)+マシン」→「大マッハマシン」という、語感が似ているだけでやらかしてしまったジョークです。

英語版

英語版では下記のようになっています。

セノ: ...Why is this humble windmill such a great view?
ティナリ: I mean, it's understandable. It must have been a long time since you last came to Mondstadt.
セノ: Because it is the true "Great Vay-iew-vyastra."
ティナリ: ...
セノ: Oh, come on. Don't tell me you don't get it?
セノ: View, vayu... and also mahamatra, vayuvyastra... no?

日本語版と違い、セノは「この素朴な風車がどうしてこんなに素晴らしい景色になるのだろうか?」と問いかけ、マジメに答えるティナリに「それは真のGREAT VAY-IEW-VYASTRAだからだ」と答えています。Great Viewと何かを掛けようとしているのだとおもいますが、この「vayuvyastra」というのが日本人には何だか判りません。調べてみると……

en.wikipedia.org

ヒンドゥ神話における「Celestial Weapon(天上界の武器)」、いわば神の武器のようなもの。しかしこんなの、英語圏の原神プレイヤーはパッとわかるのかな?とおもい、もうちょっと調べてみると……これ、セノのキャラクター説明に登場してるのですね。

単語「Vayuvyastra」はゲーム内に登場していた

そしてこれが日本語版では「大マッハマシン」と表記されていて、既に大マッハマシンはゲーム内に登場していたのです。私はセノを持っていないので気付きませんでした。

冒険者のセノ

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これはダジャレというよりも、意外なキャラ設定でウケを狙おうとしてひたすらそれをリピートするというタイプの冗談です(空振りしてますが)。セノ、ティナリ、コレイがモンドを訪れるにあたり、役職や立場に囚われずに楽しむためにとセノが設定した各自の仮の「役割、役職」が「冒険者のセノ」「宝盗団の技術顧問のティナリ」「音楽家コレイ」というもの。セノはこの設定がいたく気に入ったらしく、面白いだろう?と言ってくるのですがティナリはウンザリしています。また、コレイもどう反応してよいか判らない様子。

そのため、その後の湖畔でのピクニックでもダメ押しの説明を行い、ティナリを呆れさせています。

英語版

3回目、仕事モードではないセノについての会話で、改めてセノが「冒険者のセノとして見て欲しい」と自己紹介している場面はこんな感じです。

ティナリ: In fairness, you only saw him in his work mode while you were in Sumeru. He's actually like this most of the time when he's in a good mood.
コレイ: Yep, it's true. Sometimes when he's eating, he'll grumble about how the bowl is too shallow for the amount of food it contains, and other random stuff like that.
セノ: I understand. Then allow me to reintroduce myself. Before, you knew me as General Mahamatra Cyno. Now, please see me as Cyno the Adventurer.
ティナリ: Yeah, so that's another thing he does! He'll keep repeating something he thinks is funny until you stop trying to resist.

これは「何度繰り返してもウケないことが理解できずひたすらリピートするセノ」と「呆れて我慢できなくなり突っ込みを入れたティナリ」をセットで楽しむところですね。日本語だと「みんなが受け入れるまで延々と繰り返すんだ」となっている箇所、英語版だと「あなたたちが我慢するのをやめるまで繰り返し続けるんだ」となってますね。セノの立場からすれば「笑うのを我慢しているのをやめるまで」なのでしょうが、ティナリは多分「面白くないのを聞き流すことを諦め、面白いフリをするまで」ぐらいの意味で言ってるような気がします。

ラクラク駄獣、コレコレイ

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上記の動画ではカットしてしまったのですが、ティナリが直前、コレイがモンドを訪れる意義について「これはコレイの……」と言ったことが引き金になって「これはコレイ」→「コレコレイ」→「ラクラク駄獣」になっています。カットした部分も含めた流れは下記で見られます。


英語版

英語版だとひねるポイントが語感や語呂ではなく、風花祭終盤で行われる「風の花」を捧げる際の花のことに掛けています。

ティナリ: Plus, it was a good chance for Collei to get out and meet some new people.
セノ: "Collei Lily."
パイモン: ...What?
セノ: Collei's Windblume. Maybe she should call it a "Collei Lily." It sounds very Mondstadt.
セノ: There's also "Collei Flower," which would technically make more sense, but somehow it doesn't sound as nice.
 (The group quietly looks at Cyno for a while)
ティナリ: ...Moving swiftly on...
パイモン: Wow, he just completely ignored the joke and carried on the conversation. Guess sometimes, that's the only way forward.

面白いのが、日本語版だと最後にパイモンが「さっぶい空気のなかでも会話を続けられる……」とティナリを表していますが、この「ギャグが滑って寒い空気になる」を英語でどう言っているのかと思ったら、英語版は「完璧にジョークを無視して会話を先に進める」と言っていますね。やはり「寒いギャグ」というのは日本の(それも多分お笑い業界で使い始めた)表現なんでしょう。中国語版はどうなってるのか気になります。

す「ベリ」落ちた

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これはキツかったですね。石門のあたりで見かけた二足歩行の動物はパイモンだったのか?というセノの発言。何を言っているのか?と突っ込むパイモンをよそに、セノはそう思った理由を話し始めますが……「ヴァルベリーを食べ過ぎたパイモンが、空中からす『ベリ(ヴァルベリーのベリ)』落ちたのかと思った」と、自らのジョークを解説してしまいます。この「自分で解説せざるを得ないジョーク」もさることながら、その内容も無理矢理のこじつけ過ぎて。この日本語版脚本を作った方、苦労されたのではないでしょうか?

個人的には「あの日」と問いかけたセノに対するティナリの「どの日だ!?」の語調が好きです。ティナリ、ストーリー上だとちょっと発言がきつめのキャラクターに見えて苦手だったのですが、きつめの発言がかえって突っ込みを際立たせるという面で、セノとの相性は抜群ですね。

英語版

英語版では、ヴァルベリーではなく「Ground Nuts(ピーナッツ)」と「Ground Up」を掛ける内容になっています。苦労してるなぁ……

セノ: Tighnari. While we were on the road, we spotted something white, walking on two legs. Was that Paimon?
ティナリ: Which day was this?
セノ: Just after passing through Stone Gate.
ティナリ: ...
パイモン: Uh, Cyno, are you sure your eyes were working that day? Or maybe your hood was blocking your vision?
パイモン: Paimon always flies. There's no way she'd ever walk.
セノ: Is that right...
セノ: I thought that you'd maybe snacked on too many local... ground nuts.
コレイ: ...
セノ: No? Not funny?
セノ: Ground, you know, as in "ground up," but also "the ground"... ground nuts make you fall to the ground...

コレイ、やっと「来れ」たのか

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これは2日目のエピソードで、図書室でセノ達と鉢合わせたコレイに対してセノが掛けた言葉です。まぁよくあるオヤジギャグ的な語呂遊びですが、英語版は難易度高め。

英語版

英語版だと、人物名と発音が似た単語を繋げることで文章を作る冗談になっているようにおもいます(こちらは私では意味が分からず、HoYoLABで少したすけを求めて解釈を支援してもらいました)。

アルベド: Sucrose? Collei? What are you doing here?
セノ: I can only "Sucrose" that they were "Collei"-ng in on someone. At "Lisa," that's as far as "Cyno."
ティナリ: Please... Just stop it with these puns, I beg you. Are you trying to win worldwide fame for unfunny jokes?

これ、恐らくですが

  • Sucrose(スクロース)= Suppose(サポーズ)
  • Collei-ing(コレイ-ング)= Calling(コーリング)
  • At Lisa(アット リサ)= At Least(アット リースト)
  • Cyno(サイノ)= I Know(アイ ノゥ)

で、

I can only suppose that they were calling in on someone. At least that's as far as I know.
彼らは誰かを呼びに来たのだろう。少なくとも私が知る限りは。

となるのではないかと……。いやぁ……がんばってるなぁ英語版。ちなみに「Cyno」は英語版での「セノ」の名前です。読みは「サイノゥ」みたいな感じ。英語版だと、日本語と全然違う読みになるキャラクターが他にも居ます。たとえば

  • Kaeya(カィヤ)= ガイア
  • Dehya(ディハイヤ)= ディシア

などですね。ガイアは、中国語版では「凯亚(簡体字)」「凱亞(繁体字)」なので、日本語版のカタカナ名は中国語版に寄せたものなのだとおもいます。Kaeyaの語源はちょっと判りません……。ディシアについては、7世紀のモロッコあたりを治めた女王カヒナ(Kahina、Dihyaとも呼ばれる)から来てるのかな……と思いますが、正しいところは判りません*1

まとめ

というわけで、とりあえず風花祭2023のエピソード1、2におけるセノのジョークについて記録しておきました。初日のジョークだけを一気に見る場合は下記の動画をどうぞ。

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また、中国語版との対比を含めて詳しく解説されているNoteもありましたので紹介しておきます。中国語版を中心に漢字の扱いなどについて詳しく説明されているのですごく面白いです。

note.com

*1:Genshin Impact Wikiにも、当初Triviaとして「Dehya's name may be derived from Dihya (Arabic: ديهيا), a Zenata queen who ruled the entire Maghreb region and led the resistance against the Umayyad forces.」という記述があったのですが、消されています。推測でしか無いからでしょうか。