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日常茶飯事とお仕事と

ここしばらくの仕事で思ったこといくつか(1)

ここしばらくの仕事で思うことがいくつかあったので、忘れないように書いておきます。

やり方をコロコロ変えるのはダメ管理の兆し

最初に決めたやり方を、2ヵ月とか3ヵ月とかで変更し、常に更新をかけていくことをあたかも「日々進化する」かのようにいう人が居ますが、たいていそういう管理方法は下記の点で問題を生じさせます。

  • 変更に伴い関係者すべてに作業のオーバーヘッドが出る(コストの問題)。
  • 変更に伴い関係者がそのやり方にあわせて工夫したことや考えたことが無駄になるかも知れない(モチベーションの問題)。
  • 変更理由が明確で無いと、変更の原因が自分達にあるのではないかという疑いを持つようになる(モチベーション、信頼感の問題)。

何事も人間が絡む事である以上、ルールを設けたり運用開始した直後はすぐにフルパフォーマンスでは動きません。それぞれの個人が持つ特性やなじみ方によって方策が効果を出すまでには時間がかかります。いわば「なじむ」時間を無視して次から次へと方策を打ち出すのは得策ではありません。

マネージャーとしてみればまるで自分が人員を操っているかのような錯覚に陥るかも知れませんが、実際は「人員を振り回している」だけです。

こうならないためには以下のような方策があると思います。

  • 事前に十分な検討を行い、方策の「不具合」をなるべく事前に洗い出す。
  • あらかじめ試行期間である旨を関係者に周知して方策のテストに協力してもらう。
  • ルールを軽くして縛りを減らす(コアな部分の方針だけに絞る)。

一番よいのは最後の「ルールを軽く」です。管理初心者は縛ることが管理であるという勘違いをしがちですので、なかなかこの領域に達せませんし、それなりに配下のメンバーの性能が高くないと任せられないというのもありますが、任せてみなければ配下のメンバーも育ちません。ある程度の脱線やブレを受け止めて、実績や実践を通してルールを固めていくという方策を採るだけの余裕を管理者が持てるなら、この方策が一番だと思います。

そうすれば変更は緩やかにじわじわと適用できますし、調整もききます。

少なくとも、多数の人間に影響する方策を決めるなら十分な検討や準備を行うか、絶対ぶれて欲しくない芯を見極めて、そこを中心にルールや体制を走りながら組み立てていくのも手です。

成長には時間がかかる

巷でプログラマー育成教材や講座などが数ヶ月の学習で戦力に!などとうたわれて公開されていたりします。しかし、それはあくまで「ゼロから1弱くらいまでの力をつける」程度のモノであり、数ヶ月程度で「即戦力」のようなことにはなり得ません。ここでいう即戦力とは、言われたことを着実に実現出来るレベルから、果ては、自分で顧客との折衝を行ったり設計指針を決めたり、物作りメンバーに対する指示や指導を行えるようなレベルを指します。

特に新人と呼ばれ、さらに工学領域などの学問を修めていない「異ジャンルからIT企業に入ってきた」人の場合、数ヶ月程度ではまだ「土俵に立てるかどうか」が実際のところ。本人が立っているつもりでも、その周りは先輩達ががっちりと倒れないようにガードしなければ転んでしまいます。そこから自分の足腰で立ち、動き回れるようになるにはさらに数ヶ月、じっくりと時間を掛ける必要があります。この時間を無視して次から次へと新しいことをさせるのは、いわば「まだ乾燥していないペンキに色を重ねる」ようなもの。

相手は人間なので、個人差もあり一概には言えませんが、少なくとも教育や技術の習得には時間がかかるものです。言われたことが出来た、だけでは仕事になりません。言われた指示ややるべき目標から、そこに至る道筋を自分で組み立てて、場合によってはメンバーを率いて自分で決めたコースを進む、というようなことができて初めて「一人前」かと。

できれば、生乾きのペンキに色を重ねて変な色になり、結局全部剥がしてやりなおし、みたいなことにならないようにしてもらいたいところです。

伝えない思いは伝わらない

普通に仕事をしていれば、ある程度の時間を経ると職場が変わったり仕事内容も変わっていくものですが、若い人にはその変化の理由や必要性が判らない場合があります。ベテランにとっては当たり前の事でも、新人や若手には伝わりません。いくら理由が「本人のため」であっても、本人がそれを理解出来なければ勘違いされても仕方がないのです。

たとえば人員が足りず、一時的にすこし単純作業とも言えるような仕事をやる羽目になることも当然長い仕事の中ではあるかと思います。ですが、その背景や理由をきちんと説明しなければ、本人は「もしかして自分にはこの程度の事しかできないと判断されたのだろうか」などと、余計な不安を抱えてしまったり、ネガティブな想像に支配されてしまうことだってあります。

もちろん、そんなことは考えず「言われたことを黙々とやるのが仕事」という発想の世界もあるかもしれませんが、ITの仕事はそのやり方だといつまで経っても「作業員」にしかなれず、言われた技術領域が陳腐化すると同時に切り捨てられることになりかねません。自律的に考え、悩み、解決するという仕事をやっていく必要があるなかで、当然のように自分のことについても考えるわけです。

そこにきちんとした理由や意図を、本人に判るように伝えるというのは先輩やリーダー、マネージャーの仕事です。もちろん、5年10年年ごとをしているベテランならばそれくらい理解しろよ、というのもアリですが、ことさら新人に関してはそれはNGです。いずれ自分で理解できるようになる。だけど、今は念のためきちんと説明するから聞いて欲しい、という、すこしかがんで相手の目の高さまで降りていく説明で、自分のことに関する不安を払拭し、気持ちよく、当人の集中力や考えをやるべき仕事にフォーカスさせる。それもマネージャーやリーダーの仕事です。

なので、「それくらい判るのがビジネスパーソンだ」などと言い放つ教育は絶対にやってはいけません。「それくらい判るようにいずれはなって欲しい」という思いを持つのは構いませんが、そこまで相手を誘導して引き揚げるのは先輩の仕事です。