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日常茶飯事とお仕事と

OfficeやVisual Studioライセンスのこと

仕事で使うマイクロソフト Visual Studioのライセンスについて。ライセンス形態は難しいし結構変わるのでついて行くのも大変なのですが、かといって仕事をしていく、特にITの仕事をしていく技術者やマネージメント担当が疎かにしていいものではありません。信用の問題です。コピーできるから、特に規制がかからないからやっていいだろう?というのは、人が見ていなければ盗んでいいだろうというのと同じ理屈。また、一通りルール違反をやっておきながら「それが悪いことと知らなかった」というのも、本当に素人さんがそう言うのならまだしも、みずからソフトウェアを作って売っている人間がそれを言うともう怒りを通り越して失笑しか出てきません。

そんなことないやろ?と思う人は恵まれた環境で働かれている人です。実際、そんなことはあちこちで起きてます。

というわけで、議論になったときに備えて自分用にライセンスの情報をまとめておきます。なお、ライセンスの情報は下記の「Microsoft Visual Studioのライセンス(2017年3月)」を参考にしています。

https://visualstudio.microsoft.com/wp-content/uploads/2017/05/Visual-Studio-2017-Licensing-Whitepaper-March-2017_Japanese.pdf

Visual Studio Community(コミュニティ)/ 無料版

Visual Studioにはコミュニティと呼ばれる無料バージョンがあります。かつてはExpress(エクスプレス)と銘打たれていたエディションの後継ですね*1。これですが、基本的な一通りの機能が使えるにも関わらず無料ダウンロードが可能。ただし、利用には制限があり、下記の条件のいずれかを満たす場合しか利用できません(2019年3月時点)。

  • 個人開発者である。
  • エンタープライズではない組織(PC台数が250台未満かつ年商100万ドル未満)で利用者が5名以下。
  • エンタープライズかどうかを問わず、教室の研修環境、学術的調査、オープンソースソフトウェアプロジェクトへの貢献を行う作業を行っている場合。

エンタープライズという言葉が出てきますが、PC台数が50台くらいの企業であれば、エンタープライズではない、ということになります。しかし、Communityを使えるのは5人までですので、開発者が6人を超えた時点で超過した人から普通のライセンスを購入する必要がある、という解釈になるかと思います。
Communityエディションの利用権については冒頭の資料、8ページ「Visual Studio Communityの利用可能者」に明記されています。

visualstudio.microsoft.com

Visual Studio(買切り)

パッケージを購入する従来スタイルです。Professional Editionで65,000円くらい。バージョンは購入したものに固定されるので、新バージョンが出たらお金を出してアップデートしなければなりません。
ライセンスは「ユーザー単位」なので、説明書きにも「ライセンスを付与されたユーザーは、必要なだけのデバイスにこのソフトウェアをインストールし、プログラムの設計、開発、テスト、デモに使用できます。」とあります。例えば開発の過程でPC2台(2カ所)で作業する必要が有る場合、1名が利用するならば両方のパソコンにインストールしても構わないということですね。また、おそらくですがマイクロソフトのライセンス条件上、「職場」と「自宅」の区別はありません。なので、会社が許すならば会社で貸与されたVisual Studioを在宅勤務のために自宅PCにインストールしても問題無いはずです(これは後述のSubscription版も同様)。
このあたりについては冒頭資料の13ページ「ライセンスを付与された複数のユーザーが同じソフトウェアを利用可能」や「該当ソフトウェアをインストールおよび実行できる場所」などに記載があります。

www.microsoft.com

Visual Studio Subscription(サブスクリプション

年間利用契約を更新しながら使うスタイルの契約です。こちらは、以前は「MSDN Subscription」という名称でした。このライセンス形態のポイントは、年額15万円(以降更新で10万ほど)を払うことで、Visual Studioに限らずWindowsの過去バージョンを含めたあらゆるバージョンや、 SQL Server、Officeなど、各種ツール群を自由にダウンロード入手して利用できるというものです。Visual Studio自体を始め、全製品について契約が続く間は新バージョンを利用できるので、常に新しいモノを使い続けることもできますし、もう販売されていない古いモノを引っ張り出すこともできます。
こちらもライセンスはユーザー単位。1名が、たとえば仮想環境にWindowsの各バージョンをインストールして、新しいアプリの動作確認を行う、といったシチュエーションでもWindowsを複数買ったりしなくても良くなります。また、最新バージョンのOSやDBも入手できるので、新しいSQL Serverでの動作確認を先行して実施するといったことも可能になります。

www.microsoft.com

本来は1ライセンス1名で、複数PCにインストールしても使えるのは1名となりますが、メンバー全員分のライセンスを購入してあれば、誰がインストールしたものでも共用可能というライセンス条項になっています。なので、10人の開発チームであれば10ライセンスを購入して契約を続ける限り、マイクロソフトのツール類に関する管理は一切不要になるということです。

ライセンスの形態

企業向けの販売の場合、ボリュームライセンスと呼ばれる形式で「大量に一気に契約するなら、値段安くして、インストーラーとかの管理も楽にします」みたいなのがあります。これをマイクロソフトと結ぶことで、毎年、メンバーの増減なども含めて費用を精算することでいちいちバラバラに買ったりする手間も省けますし、管理の手間も省けるというようになっています。
ライセンス形態も購入数や企業規模によって、Enterprise Agreement、Open Value、Select Plusなどいろいろあります。このあたりはマイクロソフトのリセラーか営業に問い合わせればすっ飛んできて説明してくれるので、よく分からなければさっさと聞いた方が早いです。調べてまとめて自分たちで選択すると相当コストがかかると思います。

ライセンスの悪用

上記のうち、サブスクリプション形式のライセンスについては、組織によっては悪用しているところがあるように思います。たとえば

  • 部署のリーダークラスや管理職名義で1ライセンスだけ購入し、会社の数十人に利用させる。
  • 上記までいかずとも、各部署のチーフ開発者分だけ購入し、部署内のメンバーにはそのライセンスのコピーを配る。

この方法を使えば、WindowsやOfficeも含めて新規購入する必要がなく、ライセンス代10万円ちょいだけを毎年払うだけで済みます……が、明白なライセンス違反ですし訴えられても仕方がないレベル。

マイクロソフトのライセンス形態はかなり「紳士協定」に基づくものが多く、申請や登録の手間を省く代わりに、ルールを守ってね、という傾向があります。たとえば、契約更新時期までの1年間の間に自社の人数(特に派遣社員など)が増減しても、最終的に更新時期に何人が使っているか、ということで精算するなど、管理の手間を省けるように「変なことはしないと信じてるよ」という関係を保とうとする傾向があります。そこを逆手にとって「できるんだからやって悪いというルールはないだろう」という勝手な理論でライセンス違反を行っている組織は、早いところなんとかしないと誰かが告発したら訴えられないにしても過去分まで含めた費用を一気に支払う羽目になりますよ……。

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*1:厳密にはVisual Studio 2017はまだExpressエディションがあるようで、そちらは商用利用OKとのこと。