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日常茶飯事とお仕事と

テレビの怖さを垣間見た

秋葉原の例の事件について。テレビの情報操作の露骨さを垣間見た気がする。


今朝の番組で、視聴者のアンケート結果を写していた。事件についてどう思うかという質問に対し、人間としてどうかとおもう、といった厳しい手書きの一覧が画面に写されていた。で、これを出してどうなるのか。逆に、すでに同じような境遇でギリギリの線に居る人たち(個人的に同情はしないが)に、全く関係無い世間のきつい意見を伝え、敢えて暴走のスイッチを入れてしまうことになるのでは? 厳しい、辛い不幸な状況にある人なんてのは世の中にたくさん居るわけで、そうした中にも、耐えられなくなる人も必ずいる。そういう人の存在すら許さない、といわんばかりのアンケート結果と、それに頷くタレントたち。この映像自体が、人によっては非常にきつい放送に思えるんじゃないかなぁ。今のご時世、これだけ個人もふくめた情報ネットワークができあがっている以上、報道しない、という選択肢は現実的ではないと思う。であれば、もう少し逃げ道もふくめて伝えてあげれば、弱い人たちも救われるのでは?


また、「人を傷つけたり、殺したいと思ったことはありますか?」という問に対する回答は、「思ったことがある」が10%ほど。で、その1割の「少数意見」を同様に写していたが、今回の事件の犯人と似た意見の近くに、少し暗く映っていた、ナレーションでも読まれなかった意見がこれ。

  • 暴走族が爆音で走っている時。
  • いつも。

これのどちらも、ちらっと映ったけれど取り上げられず。ナレーションとタレントによるコメントが付いたのは、今回の事件とかぶるような回答だけ。後者はあまりにぶっ飛んでるのでおいておくとして、前者の「暴走...」なんてのは、誰しも心の中で思ったことあるんじゃない?自分だけ?もしかしてわたしゃ1割の側? 人を傷つけたいなんて考える気持ちが理解できない、とかうなづきながらしゃべってるタレント達、それホント?行動して超えてはいけない線を越えるかどうかの違いだけで、心の中で思ったことはあるんじゃない?そんなに信じられないこと?相手を張り倒してやりたい!と思ったこととかあるでしょ?もちろん「ええ、私もよく思います」とか言われたらどん引きだけど、だったら言わなければいいじゃない。


で、最後は「こうした事件を回避するためには?」みたいなアンケート。これもいろんな回答が書いてあるなかの、1行だけにサラっとスポットをあてて、あたかもそれを「多数の意見がここに集約されてました」と言わんばかりにナレーションを入れる。「そう、家族なのです」。ってさぁ、どういう流れで「家族なのです」になるわけ?

結局、テレビ局側としては

  • 事件の原因は、不満や不遇な状況に耐えられない弱い人間や、人を内向的にさせる新しいもの(ゲームとか)にある。そういう人間は周囲から疎まれて当然。
  • 人を傷つけよう、殺してしまおうなんて考える人間は世の中では少数派。
  • こうした問題を解決するには、家族の絆しか無い。

という路線にどうしても落ち着けたいようだ。それも、ここ10年のこうした事件をまとめて「そういうもの」とひとくくりにしたいらしい。そんな単純な話じゃないだろうに。


考えることをやめている人たちはテレビの言うことを素直に聞き、子供達に「こんなことをする人間は理解を超えた異常者。」と説き、その異常者の候補に不幸にもなりそうな子供達が救いを求める先を1つ潰すんだろうね。だって相談しても理解してもらえなさそうな人に、自分のギリギリの状態を打ち明けるなんて、まだ理性が残っている人にはなかなか出来ないこと。で、周囲がテレビの意見に染まりきった中で、孤立して助けを求められないまま次の暴走者が出ると。

秋葉原の事件を見たあと、テレビを見ながら妻に「次は九州か大阪で模倣犯が出るんじゃない?」と予想を話していたら...それっぽいことがちらちらと起きてるみたい。

候補生は実際に一定の割合で居るんだって。そんなにレアじゃなく、それこそそこら中に。テレビの人たちは「信じられません。こんなことをするなんて」とか言って目をつぶるけど、実際に存在しているものに目を向けないで、何が解説だ、なにが報道だと。もう少し現実はそのまま受け止めた上で、その上段をいくような高度な議論や報道、解説を望みたい。テレビ局ごときが世論を操作するんじゃない。また、こんなのに操作されちゃダメ!>All。